香水の都グラースと魔法の小瓶
今日は南仏グラースのお話。私は子供のころから香りが好きで、趣味はポプリを作ることでした。乾燥させたお花やハーブ、スパイスを小瓶に詰めます。子供のころはこの小瓶が魔法の小瓶に見えました。
お母さんとスーパーに買い物に行ってはスパイスコーナーで夢を巡らせていた少女が、初めてひとりでお出かけした大都会は原宿のキディランドと生活の木でした。もちろん、将来の夢は生活の木の店員さんです。
大学4年生になった時、調香師になるんだ!と就職活動もせずに、貯金をはたいて学校に通い始めました。このころは香水の小瓶が魔法の小瓶に見えました。とてもいい香りがするお教室が大好きで、今思うとレッスンがあった日はいつも癒されて帰ってきました。とは言え、毎回レッスンで習う単品香料はいい香りばかりではなく、ぶっちゃけ若い私には苦手な香りがほとんどでした^^; それでも楽しく通っていたレッスンですが、思いがけないところに落とし穴がありました。化学香料が合わなかったらしく、最後までレッスンを受けられなかったのです。確かに、髪の毛のセット剤が顔に触れると痒くなる肌質で、泣く泣く、調香師の夢を諦め、普通に就職しました。
それでも、就職して最初の休暇はずっと夢見続けていた南仏グラースを訪れました。グラースは香水の都として知られる町です。もともとは革産業で栄えていました。革の手袋はなめし革の匂いが残るということから、この匂いを消すために、香料を染み込ませた革手袋が作られるようになります。こうやって、ローズやジャスミン、ラベンダーなどが生産され、香水産業が栄えてゆきます。
グラースの香水工場を見学して、学校で習った香りの抽出技術も実際に見ることができました。そして、何より気に入ったのは香水瓶の博物館でした。小さなスペースにアンティークの香水瓶のコレクションがずらりと並びます。もともとアンティークがもつ繊細な美しさが大好きな私はすっかり魅了され、夢のような時間を過ごしました。
そして、この時は実現しなかったのだけど、いつかやってみたいのがバラとジャスミンの花摘みです。バラは5月頃、ジャスミンは9月頃。グラースは温暖な丘陵地にあり、この特殊な土地から生まれるバラの香りもまた特別だと言われています。精油1滴を取るために必要なバラの花びらはなんと300枚!だそうです。
今私は化学香料を使わない天然香料の香水作りを勉強しています。魔法の小瓶に夢を見る旅はまだ続きそうです。